『パーク・ライフ』(吉田修一/文春文庫)

 ――「あの、明日も公園に来て下さいね!」(「パーク・ライフ」100項)
 第127回の芥川賞の受賞作。文庫化されたのを機に買って読んでみました。受賞作の「パーク・ライフ」と「flowers」という短編が収められています。……主人公は、電車の中、まだ同じ会社の先輩がいると思い、臓器移植の広告を眺め「ちょっとあれ見て下さいよ。なんかぞっとしませんか?」と声を出してしまう。すると、背後の見知らぬ女が「ほんとねぇ、ぞっとする」と答えた――。この小説をなんというふうに説明していいのかわからないのですが、裏表紙に書いてあるように「なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめ」ているというのは、巧い表現だと思います。この小説の「空気」がとても心地良い。そう感じます。