『スペース』(加納朋子/東京創元社)

 待ちに待った駒子シリーズ最新作『スペース』です。ファンとしては、内容云々以前にそれが出版されたと言うことだけで嬉しいものです。この時のために「スペース」をダウンロードせず、『ミステリーズ!』を買っても、「バック・スペース」をあえて読まなかったのです。……で、感想ですが、これはネタバレなしには上手く語れませんね。私は加納朋子フレーバーを感じるだけで幸せなので、客観的な評価は到底できませんし。本作に限らず、駒子シリーズのキーワードは<手紙>であり<物語>であり<謎>です。『スペース』ではその中でも、<手紙>という概念を主題に置いています。もちろん、その内に隠されている<謎>も、瀬尾さんによって鮮やかに解かれ、読者を唸らせます。「バック・スペース」の最後の<手紙>は、未来(駒子シリーズの続き)への伏線とも言うべきで――確か英語の題名の予定だったはずだと思います――期待させられますね。……本書『スペース』は『ななつのこ』『魔法飛行』のようにミステリの部分を全面的に押し出してはいません。むしろ「恋愛小説」だと捉えること出来ます。ともかく、駒子シリーズを読んだ人ならば文庫落ちしてからとは言わず(東京創元社は文庫になるの遅いですし)読んで頂きたいですね。