『グロテスク』(桐野夏生/文藝春秋)

 横山秀夫の小説がどこまでも男くさい、男の小説だとするならば、この『グロテスク』はグロテスクな女の小説だと思います。和恵、ユリコ、その姉(わたし)の三人の女を中心に、東電OL事件に触発された物語を独特の解釈でまるでノンフィクションのように描き出しています。私的には第5章など退屈でしたが、それでもこの小説が放つ圧倒的なパワーに打ちのめされました。コンプレックス、ルサンチマン、欲望……歪んだ社会(学校)が丁寧に、緻密に書かれています。本が生きている――本に血が流れている、そう感じさせる一冊でした。